
― 辻野さんが「食事療法士」を目指した理由はどんなきっかけですか?
生の頃、部活をやっていたので健康には気をつけていました。高校を卒業して部活が終わり、次に何をしようか思っていた時に、僕の師匠である菅野賢一先生(ガン患者に対し食事療法で数々の実績を残している医学博士)に出会いました。当時の僕は、「ガン=死の病気」と思っていたので、菅野先生がガンを完治させているという話を聞いても半信半疑でした。しかしお会いするチャンスがあり、直接お話を聞くうちに既成概念を覆されました。僕にとってはまるでブラック・ジャックのように見えたんですね。以来、菅野先生に弟子入りをしました。
― ガンの治療といえば西洋医学の最先端医療というイメージがありますが、食事療法と鍼灸治療という東洋医学でもアプローチができることを始めて知りました。 そうなんです、病院に入院する以外の選択があるということを、多くの人に知ってもらいたいと思いました。東洋医学の世界では「食べ物は、血となり、肉となる」と言われています。食べ物を正しくすれば血液はキレイになり、細胞が正常になりガンにならないと考えられています。うちの師匠が面白かったのは、食べ物だけに囚われなかったこと。健康であるためには、自然治癒力を高める五要素、「心」→「太陽」→「空気」→「水」→「食」という優先順位をつけて、それらと日々どういう付き合い方をしているか。そのトータルバランスの重要性を説いていました。
― 五要素ですか。ヨガでも、「太陽礼拝」という動きがあったり、「呼吸法」を行ったり、同じような要素を大切にしています。カラダに良いとされていることは、なんでも根っこの部分が一緒なんですね。
神道の世界でも、武道の世界でもどこでも一緒ですよね。ただあえて、この五要素に優先順位をつけたのは、うちの師匠ならではの考え方でした。「食事はもちろん大事、でもそこだけみていると、失敗しますよ」ということなんです。要はすべてのバランス。食に関して豊富な知識を持っている、健康マニアは多いけれど、大切なのはその知識を生かすこと。「心」を後回しにしている人が多いと思います。
たとえば、「コーヒーは好きだけどカフェインを控えている、でも友達と一緒にカフェへ来たから、仕方なく飲む・・・」この良くないと思いつつ飲むことが心の負担なんです。飲むのであれば、美味しいと思って飲む方が良い。実は食べ物の害よりも、心が美味しいと思うプラスの要素が勝ちます。でもそれを逆転している人がすごく多いんですよね。東洋医学では、さきほどの五要素の優先順位にある通り、「心」を一番優先しています。心が健康でなければ、いくら食べ物に気をつけても、健康を維持することができません。
― たしかに情報がたくさんあると、頭でっかちになります。それにあれこれ考え過ぎると、純粋に食事を楽しめないです。また実践でいうと、辻野さんは「よく噛んで食べる」ということを推進されていますか、それはなぜですか?
べ物は胃で消化されて腸を通り抜け、さらに腸のなかにある血管の壁を越えて、血管のなかに入っていきますよね。だからまずは、口の中で食べたものを細かくして、唾液で溶かし胃腸への負担をかけずに、吸収をさせてあげることが大切です。たとえば、お米は分解されると糖になりますが、良く噛むことでお米の甘みを感じるようになるんです。そういう意味でお米は、「白米は100回、玄米は200回」程度が理想です。しっかり噛まないと本来の味がわからないということなんですね。
それと舌の表面には、味を感じるための「味蕾(みらい)」という細胞があります。食べ物が味蕾細胞の味孔という穴に入るとセンサーが反応して、脳に味の指令を伝えます。よく噛み細かくしないと、食べ物の分子がこの穴に入らないので味を感じずに飲み込んでします。良く噛まない人は味を感じない、だからお米にふりかけをかけたりするんですよね。
― なるほど、よく噛まないと味を感じないから濃い味を求めてしまうんですね。味をプラスするのではなく、感じる力を養うということですか。 それに、よく噛んで食べ物の味をしっかりと感じられると、脳(心)と身体が繋がっていきます。そもそも人間は生きるために物を食べているので、自分の身体に不要なものは不味いと感じるはずなんです。でも多くの人は、よく噛まない故に素材の味に気づかず、外側のソースや調味料の味で良し悪しを判断してしまっていることがあります。だから身体に入って吸収したときに、「求めているのと違うぞ?!」となり、それが蓄積されると身体の負担になってバランスを崩す元になる。その入り口であるのが口であり、舌のセンサー。それを働かせてあげるという意味で、噛むことが大切になります。人間の身体は本当に巧妙にできていますよね。
― お米を100回噛むことや、お米を食べてやせるというテーマの本を書かれていたりしますが、辻野さんはなぜお米にこだわるのですか?
東洋医学には、「身土不二(しんどうふじ)」という言葉があります。これは自分の身体と住んでいる場所は、二つに分けられないという意味。人間(ホモサピエンス)は、穀物を食べてきました。それがいまの歯に現れていています。前歯は草を噛み切るためにあって、犬歯は肉を噛むため。臼歯は粒をすり潰すのにちょうど良く、進化をしてきました。歯の割合でいうと32本あるうちの、20本が臼歯。穀物を中心に野菜と少しの肉を食べて生きていた証拠なんですね。もしも我々が肉しか食べていない種族だったら、犬歯だらけのライオンみたいになっているはず。そこで、「穀物5:野菜2:肉1」という比率の食事療法のスタイルができました。
穀物も民族によって種類が違うんですが、我々は日本に住んでいるから、その環境に応じたもの「身土不二(その土地のものを食べていく)」の観点で、お米(玄米)を中心に、大豆や雑穀を食べていくことをお勧めしています。健康志向の方は緑の葉野菜に意識がいきますが、野菜ばかり食べてご飯を残してしまうのでは、食のバランスを崩してしまうことになる。玄米の栄養や、野菜のビタミンうんぬんの前に、どういうバランスの食事をしているか、ということが大事なんですね。
― 痩せたい人は炭水化物を抜く、というようなダイエット法をよく聞きますが、お米を食べて痩せるのは衝撃でした。ダイエットといえば、記録(データを残す)ということについて、どうお考えですか?
憶という自分の主観だけだと、憶測になってしまい不正確なので、食事の記録をつけると良いと思います。「私は一生懸命玄米菜食やっているのに!」や、甘いもの控えているつもりだけれど、「あれ、今週は結構、食べているな(笑)」というように、自分の感覚との相違が生まれる。だからこそ記録で客観的な視点で自分を見ることができると、「じゃあ来週は、甘いものを半分に減らそう」など、軌道修正ができる。こうやって記録を残すことで、今後の目標や作れるようになりますよね。また、玄米菜食を実践する場合にも、たとえば一日に食べる3食全てを、米にすることは難しいけれど、2食なら挑戦できるかもしれない、それなら一週間、「3食×7日=21食」のうちの半分、11食以上は玄米にしてみようなど、そうやっていつどれぐらい何を食べたか、確認することもできます。
― 辻野さんは体脂肪が「3.9%」という見事な測定結果ですが、キレイで健康的にダイエットをする秘訣を教えてください。
自分の生活スタイルの結果を認識できるので、測定するのをお勧めします。毎日の食事記録と毎日の測定結果を照らし合わせると、玄米菜食のこの時期は数値が安定しているけれど、この時期は、お付き合いでイタリアンが続いたから数値が崩れたなと・・・と、いうように結果と原因がわかる。またその照らし合わせた結果から、「わたしには○○が合わないのかな?」という回答と、今後の改善点を導きだすことができますよね。
それと、健康的にキレイに痩せていく人と、不健康的にやつれていく人がいますが、その違いは気が巡っているか、滞っているかで大きく分かれます。気が巡っていれば排泄能力があるので、食べても太らないのですが、気の巡りが滞っていると食べる量が少しでも、体内に留めてしまうので太ってしまう。もちろん食べる量を減らせば痩せますが、体内の代謝機能が衰えているので、食べる量が元に戻ると必ずリバウンドしてしまう。僕がいままでお話してきた食事療法とは、ここに焦点を合わせています、痩せるというよりも、「全身に気を巡らすための方法」なんですね。だから痩せすぎている人には、適度にお肉がつく場合もあります。
― なるほど、ちょうど良いバランスになる、ということですね! その通りなんです、本来あるべき姿になる。それが本当の意味でのダイエットだと思います。本質から治すということ。それに心と身体は相互に影響しますので、もちろん、「心」にも良い効果があります。
― 辻野さん、ありがとうございました!
